


用途の確認を先に行ってください。大洋製器は、ワイヤグリップ止めのロープを玉掛け用具として使わず、張り索のみへの使用を推奨しています。安全係数や締付値を決めれば吊り上げに使える、という意味ではありません。
ワイヤークリップは、メーカー・製品形式ごとに適合ロープと取付条件を確認します。下表の出典カタログには、JIS形鍛造製(F)、鋳鉄製、鉄板製、マリアブル製が別製品として掲載されています。鍛造製を可鍛鋳鉄製と同一視したり、製法名だけで強度を順位付けしたりしないでください。
同カタログのJIS形鍛造製(F)には「JIS B 2809-2018」と記載されています。これは資料に掲載された規格年であり、最新規格であるとの説明ではありません。JIS規格の表示だけで安全を保証せず、採用製品の用途、適合径、取付条件まで照合します。
同製品の表面処理は、生地と溶融亜鉛メッキが掲載されています。材質や処理を変更する場合は、使用環境への適合をメーカーに確認してください。
ステンレス製も細径専用ではありません。水本機械のSUS304・SUS316製WC系列では、使用ロープ径がWC-3で2.5~3mm、WC-8で8mm、WC-12で12mm、WC-22で22mmと掲載されています。F系列とは別製品なので、取付個数や締付条件を流用しないでください。
用途制限の出典:大洋製器「ワイヤグリップの注意点と選定」。ステンレス製の出典:水本機械「ワイヤークリップWC系列」。
下表は、DAIKOのカタログに掲載された「JIS形鍛造製(F)」の6種類に限定した規格表です。採用するワイヤーロープの径を適合範囲と照合し、同じ径でも他メーカーのクリップには転用しないでください。
| 種類 | 適合ロープ径(mm) | Uボルトねじの呼び | 締付・再締付トルク(kgf・cm) | 取付個数 | 取付間隔(cm) |
|---|---|---|---|---|---|
| F8 | 6.3~8 | M8 | 170 | 4 | 5 |
| F10 | 9~10 | M10 | 300 | 4 | 7 |
| F12 | 11.2~12.5 | M12 | 470 | 4 | 8 |
| F14 | 14 | M12 | 680 | 4 | 9 |
| F16 | 16 | M14 | 1100 | 4 | 10 |
| F18 | 18 | M14 | 1100 | 5 | 12 |
締付トルクの単位は原資料のkgf・cmです。工具の表示単位と取り違えないでください。取付間隔はクリップ同士の配置寸法で、最後のクリップからロープ端までの余長とは別です。同資料は終端余長を、シンブルの有無にかかわらず公称ロープ径の6倍以上としています。
表の出典:DAIKO「グリップ・JIS形鍛造製(F)」カタログ(PDF)。
大洋製器が説明するJIS形Uボルト式では、ロープの張力が作用する長い側に本体サドルを当て、短い端末側にUボルトを当てます。サドルを端末側に置いたり、向きを交互にしたりしないでください。この手順は特殊C型など、構造の異なる製品へ流用しません。
同社の取付説明では、クリップ間隔はロープ径の6倍以上とし、シンブルアイに最も近いクリップをシンブルへ近づけます。端末側のクリップから同じ順序で、3回以上に分けて順次締め付けます。採用品の具体的な間隔・個数・締付値は、そのメーカー資料で確認してください。
取付前にワイヤーロープの構造、径、被覆の有無、シンブル、取付間隔、終端余長を照合します。被覆したまま使用できると判断せず、採用製品の被覆ロープへの適合条件を確認してください。
同社は引張荷重がかかった後の増し締めと、マーキングによるスリップ確認を案内しています。確認を効果的に行うため、取付状態とマーキング位置を記録し、点検条件は採用製品の説明書に従ってください。
取付方法の出典:大洋製器「ワイヤグリップの正しい取り付け方」。
締付トルクは、メーカー、製品、適合ロープ、単位を対応させて確認します。同じJIS形という名称でも、別資料の数値を混ぜた共通表にはできません。
例えば共和ロープのJIS鍛造クリップ取付表は、6×24・6×37ロープ用として、8mmで120kgf・cm、10mmで160kgf・cm、12mmで240kgf・cmを掲載しています。前章のF系列の掲載値とは異なります。差を平均したり、独自判断で一方を選んだりせず、購入した製品に適用する値をメーカーに確認してください。
JIS規格の名称だけで締付値を決めず、初期締付、再締付、点検の手順まで照合します。引張荷重後の増し締めについても、「設計荷重の10%をかける」などの共通条件を独自に設けず、採用製品の指示に従ってください。
比較例の出典:共和ロープ「ワイヤクリップ・6×24/6×37用取付基準」(PDF)。
安全係数の計算より先に、採用製品の用途制限を確認します。大洋製器の張り索のみという推奨を、安全係数を増やすことで玉掛け用途へ変更してよいとは扱わないでください。
資料にある「適正な取付方法で加工効率約80%」という説明は、全製品の保証値や許容荷重ではありません。「破断荷重×0.8÷安全係数」を共通の許容荷重計算として使わず、メーカーが示す用途・接続条件と、設計上必要な接続部の性能を確認します。
構造物の張り索では、ロープの仕様、作用する荷重、端末接続、取付先を設計図書と照合してください。建築基準法に関する情報は対象構造への適用を確認し、高層建築物等の検討も、必要な構造計算と製品の使用条件を分けて確認します。用途別の固定安全係数や動荷重係数を、このページだけで一律に決めないでください。
和気産業(Waki) ワイヤークリップ 9 15-204